シカの農業被害と対策
野生動物による被害が年々増え続けています。
とくにシカによる被害は、野生動物による食害の面積のうちの約7割、被害金額では3割以上を占めるなど、農業や林業に最も大きな影響を与えています。
このページでは、シカの特徴や、シカによる被害にあわないため・拡大させないための対策について説明します。
シカってどんな動物?
日本にはニホンジカと呼ばれるシカが生息しており、その亜種としてエゾジカ(北海道)、ホンシュウジカ(本州)、キュウシュウジカ(九州)、ツシマジカ(長崎県)、マゲジカ(鹿児島県)、ヤクシカ(沖縄県)、ケラマジカ(沖縄県)の7種類のシカが生息しています。
北に分布するものほど体や角が大きく、エゾシカのオスは体重約130Kg・体長200cm、ヤクシカのオスは約50Kg・100cmとかなりの開きがあります。 また、生息する地域の食べ物の栄養条件が発育に影響するので地域によっても体の大きさが違う傾向があります。
オスには角があり、年に一度、春になると抜け落ちて初夏にまた伸びてきます。
様々な植物を食べ、毒性があるなど一部の植物を除いてほとんどすべての植物が餌になります。
冬になり食べられる植物が少なくなってくると、樹木の皮を剥いで食べたり、枝や落ち葉も食べます。
繁殖期は9月頃から11月ごろで、2歳以上のメスは毎年1頭の子を生みます。
日本には決定的な天敵がいないこともあり、繁殖力が高く、推定生息数は25年間で10倍にも増えています。
跳躍力が高く200cm以上跳ぶことができ、助走なしでも150cmの柵を跳び越えてしまいます。
シカによる被害
シカはほぼすべての植物を食べるため、農作物の多くは被害の対象になります。
稲、麦、豆類、白菜などの葉物野菜、大根などの根菜、果樹の樹皮を剥ぎ取って食べることもあり、被害の幅は計り知れません。
畑のシカ被害対策
柵や電気柵
農作物などを物理的に柵で囲んで守ります。飛び越えられないように、通常の柵なら1.5〜2mの高さの柵が必要です。
電気柵の場合は1.5mほどの高さの支柱にワイヤーを4段に張り、柵の下をくぐられないように設置します。
音や光で威嚇する装置
「シシオドシ」は「鹿威し」と書き、もともとは音でシカを追い払うためのものでした。
シカは音の威嚇でも反応します。
人の声や銃声、爆発音などに激しい光などを組み合わせ、ランダムに再生/発光させることで効果を持続させる商品があります。
柵や電気柵が設置できない場所にも設置しやすいのも特徴です。
電気柵で対策!防除の仕方
シカはジャンプ力がありますが、臆病ですのでめったに飛び越える事がないため、電気柵の場合は1.5mの高さで防除できます。
ただし<特徴>の中にもある通り、フェンスや柵の下をくぐっての侵入がほとんどのため、設置する際には地形に合わせての施工が大切です。
またシカは電気柵のショックを受けた瞬間に驚いて、柵の中に飛び込んでしまう場合がありますが、傷みを学習して近づかないようになります。
イノシシ被害もある場合には、地面から20cmに電気柵を1段追加して、計5段でシカとイノシシを防除できます。
北海道にてエゾジカに対するガラガー防除電気柵の実証実験を行ったところ、シカが匂いを嗅ぎながら近づくうちに電気柵に触れ驚いて逃げ出し、電気柵を覚えて近づかなくなりました。
この実験結果から、最初の段階で強力な電気ショックを与える事で防除できるため、シカ防除には電気柵が非常に有効である事が判明しております。
ご注意!
鉄・銅・アルミ柱や木杭は直接使用するとすべて漏電してしまうので、必ず電気柵用の碍子を取り付けて下さい。
漏電すると電圧が上がらなくなります。上記画像内のグラスファイバーポールは通電しない絶縁素材になっています。
アニマルネットなどを使用する場合は、シカがネットに絡まって、ネットを破ったり、支柱を倒したりする場合があります。
ネットで防除する場合にも手前に電気柵を2段程度張っておくことでそれらの行為を防ぎ、効果的な防除を行うことが出来ます。
シカの被害と対策まとめ
シカ被害対策は、「近づけない」ことから考える必要があります。シカの隠れ場所になってしまう藪や耕作放棄地などの管理をどのように行うか等、地域で連携して行うことが大切です。
一度被害にあうと、シカは学習して何度も荒らしにやってきます。
また「模倣学習」といい、群れの一頭が学習したことを仲間が真似して、群れ全体が同じことをできるようになるため、大規模な対策が必要になります。
小さくても被害が出てしまったら、周辺地域で協力して速やかに対策を取ることが大切です。