カラスによる農業被害
近年、カラスによる様々な被害が増えています。
住宅地のゴミ置き場を漁って散らかしてしまったり、ベランダからハンガーを盗んで巣作りに利用している例なども報道されていますし、畑の農作物を食べてしまうなど、農業の現場でも被害が増えています。
このページでは、カラスによる被害のなかでも特に「畑のカラス対策」についてまとめました。
カラスの主な特徴・習性や、効果的な対策をご紹介します。
カラスってどんな動物?
日本でみられるカラスは大きくわけてハシブトガラスとハシボソガラスの2種類がいます。
このページではこの2種類のカラスをまとめて「カラス」と呼びます。
(また、冬になると大陸から渡ってくるカラスがほかに3種類います。「ワタリガラス」「ミヤマガラス」「コクマルガラス」)
ハシブトガラス
体長55cmくらい、体重700gほど。羽を広げると1mほどの大きさです。
名前のとおりくちばしが太く、ハシボソガラスにくらべて大きめで、額に丸みがあるのが特徴です。
もともとは森林に住んでいましたが、最近では都市部でもよく見られます。
「カー」といういわゆるカラスの鳴き声です。
ハシボソガラス
体長50cmくらい、体重500gほど。羽根を広げると1mほどの大きさです。
ハシブトガラスに比べるとからだがひと回り小さく、くちばしが細く額がスラッとしているのが特徴です。
森林や市街地よりもひらけた場所を好んでいます。
鳴き声は「ガー」というしゃがれた声です。
カラスの視力
一般的に鳥類の視力はヒトよりも良いと言われますが、カラスの視力は鳥類の中では普通でヒトよりも少し良い程度です。
鳥はヒトには見えない紫外線が見えるとされていて、我々には感じることができない光を感じているようです。
そういう点ではヒトが気がつかない違いを感じることができているかもしれません。
カラスの目は顔の左右にあるため、両目でみられる範囲は30°ほどです。
そのため、距離を正確に測ったり立体的に見るには顔を左右に振って対象物を両目で見る必要があります。
カラスの聴力
「超音波が聞こえているのでは?」と言われることがありますが、カラスが聞こえる音の範囲はヒトよりも狭く、ヒトに聞こえない音はカラスには聞こえません。
ですので超音波を利用した追い払い機器(防鳥機器)を作ることはできません。
聞こえる範囲はヒトよりも狭いですが、音階の違いには敏感だそうで、ヒトには違いがわからない音や声でもカラスにははっきり違って聞こえています。
カラスの臭覚
カラス(鳥類)は一般的に、臭覚は鈍感だと言われています。強烈な匂いがするものを気にせずに食べるという実験結果もあるようですので、臭覚を刺激して忌避することは難しいようです。
果樹農家さんが、「果樹が実ってきて匂いが強くなってくると食べに寄ってくる」とお話しいただくことがありますが、
おそらく匂いではなく、色がついてきて味見をして美味しい時期を学習し判断しているのだと思われます。
カラスの学習能力
同じ鳥類のハトと比べると覚えるのがはやく、覚えている時間が長いそうです。
ヒトの顔を覚えることもできますし、棒きれと銃の違いに気がついたり、散弾銃の飛距離を覚えているといった例もあるそうです。
そのようにして学習した内容を親から子や仲間へ伝えるため、一度学習されると周囲のカラスにも同様に覚えられてしまいます。
カラスって何食べるの?
カラスは雑食でなんでも食べますので、農作物はどんなものでも被害にあう可能性があります。
しかし鳥類全般の特徴として、「消化がよくすぐにエネルギーになるもの」を好んで食べる傾向があります。
これは、空を飛ぶために必要なエネルギーをすぐに補給できるようにするためだそうです。
そういう点でいえば、葉もの野菜のように消化に時間がかかるものよりも、トマトやトウモロコシのような甘くて消化に時間がかからないものが好まれるようです。
また、空を飛ぶために体を軽くしておく必要があるため、栄養を体内に蓄えておくことができません。
そのため、基本的に毎日エサを探す必要があり、エサのある場所を学習したら何度もしつこく訪れます。
エサをあちこちに隠しておく習性もあり、隠した場所を覚えている記憶力も優れています。
畑のカラス対策 1 直接遮蔽
防鳥ネット
防鳥ネットで畑全体を覆い、物理的に畑への侵入を遮る方法です。
非常に効果が高いのですが、いくつかデメリットもあります。
デメリット
畑全体を防鳥ネットで完全に覆う必要があるため、畑の面積に応じて防鳥ネットを購入する必要があります。また、隙間なく防鳥ネットをはる労力がかかります。
畑のカラス対策 2 接近妨害
テグス
作物の周囲や上空に見えにくいテグスをはり、カラスの接近を防ぎます。
カラスが羽を広げると幅が1mほどになるため、1m間隔でテグスをはり羽ばたきができないようにすることで、カラスが近づくのを防ぎます。
カラスに見えにくい透明や黒の細いテグスを使うと、知らずに畑に接近したカラスの羽に突然テグスがぶつかり、カラスはパニック状態になります。それを学習すると、以降はその畑に近づかなくなります。
物理的に接近を防ぐだけでなく、「何かが羽にぶつかった!なんだろう!?」という心理的に恐怖心をあたえるため、比較的長期的な効果が期待できます。
メリット
テグスはホームセンター等で比較的安価で手に入れることができます。畑全体を覆う必要がないため、防鳥ネットに比べて設置の手間が少なくてすみます。
畑のカラス対策 3 追い払い
追い払いでの対策は、カラスが慣れてしまわないように工夫することが大切です。
カラスに恐怖心や警戒心を持たせ続けることがポイントです。
他の対策と併用するとより高い効果が得られます。
爆音・音声での追い払い
単純な爆音機などのように定期的に大きな音を出す追い払いは、しばらくすると学習されて効果がなくなってしまう恐れがあります。
防鳥機器は、数種類の撃退用音声をランダムに鳴らすようなものは長く効果を発揮します。
それも、できるだけ変化をもたせるように、再生する場所や時間帯などを変えると更に効果的です。
爆音機はもちろん、音声機器も近隣や環境に音量を十分考慮して使用する必要があります。
パチンコ・エアガン・バクチクなど
カラスを近くに見かけたら、パチンコやエアガン・バクチク等で追い払いをすると、カラスに「ヒトは怖い」と印象づけることができます。
そうすると、ヒトを見かけただけで逃げるようになるだけでなく、不意に音がしたりするだけで「近くにヒトがいるかも」と警戒して近づかなくなったりするという効果が得られるようになります。
カラスに「ヒトは怖い」と思わせるためには、カラスを見かけたときは何らかの追い払いをすると良いです。
鳥追いカイト
比較的安価で設置も簡単で、効果が期待できます。
ただし慣れてしまうと効果が薄れてしまいますので、時々設置場所を変えるなどしてカラスに慣れさせない工夫が必要です。
また、風に煽られることが前提の対策ですので、無風のときには効果が得られません。
風の力によって破損や紛失なども起こりやすいので、こまめに設置するポールや糸などの強度を確認しながら使用すると良いです。
カラス捕獲檻
カラスを捕獲する場合には、狩猟免許(甲種)が必要ですが、果樹園などで増えすぎたカラスを捕獲して、個体数の調整をしている地域もあります。
大型の捕獲檻は、沢山のカラスを捕獲することが出来ます。
カラスの対策まとめ
カラスのような鳥類による被害から畑を守るには、上空から接近させないようにする工夫が必要ですが、畑全体を取り囲むような対策はなかなか難しいものです。
背の低い野菜などはテグスと鳥追いカイトや追い払い音声発生機器等の組み合わせ、果樹等の背の高い農作物は鳥追いカイトと追い払い音声発生機器の組み合わせなどが比較的手頃な費用で効果も期待できる方法です。